サークル『教養強化』のブログ

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BIG KYODAI IS WATCHING YOU!!

 

 「『人新世の資本論』ブームについて」というミーハーなテーマを設定して、第一回路上テント教養強化を某大学でやってきた。

 サークルの部員が三人、部員ではない方が二人に加えて、部員でもなく予めの連絡もなかったが、たまたま通りかかって一瞬寄って行ってくれた方が一人の、合計六人という構成であった。

 本記事は、我々が真面目に読書会をやっている途中に、大学の警備員が注意してきたシーンの文字起こしである。

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 路上テント教養強化は、真面目にその狙いを説明すると、シンプルに“教養を強化する”ということは勿論、“群れる”ことすら許さない、徹底的な環境管理を敷いててくる大学の中で、象徴的にテントを設置することで、大した意味もないのに無理矢理“群れる”という狙いもあった。

 ということで、テントを象徴として置いてはおくが、テントの中には入り切らないくらいの人がうじゃうじゃ集まってきくるというのが、サークル側の理想としてはあった訳である。しかし、サークルが宣伝活動を怠ってしまったこともあって、テントに集まっていたのはたった六人だけであった。テントこそ広げているが、身内で本を読みながら学習会をしているだけで、普通の学習会と余り変わらないなあと、内心反省していた。

 しかし、そんなショボい闘争に対しても、大学の警備員は注意しに来て、脅しまがいのことを行い、又、色々とびっくりする様な情報も話してくれた。情けない話だが、サークルの活動が中途半端でショボいものであったが故に、逆にそんなものでさえ注意しに来る大学のFランっぷりが露呈してしまうという形になった。

 文字起こしの内容としては、ナントカ屁理屈をこねてごねている我々に対して、仕事でそれを注意してくる警備員という構図である。警備員との不毛なやり取りから、途中で警備員がうっかり(あえて?)言い漏らしてしまった、ここは刑務所かと思いたくなるような大学の裏事情まで、見どころ盛りだくさんである。

 文字起こしの部分よりも前は、うろ覚えだが、たまたまベンチで集まった数人でたまたま同じ本を読んでいるだけだ‼️とゴネる我々に対して、警備員の二人が、あくまで“お願い”ですが、聞いてもらわなければ写真を撮る、と、我々をビビらせてきた様な記憶である。

 

 注意してきた警備員は二人いて、警備員Aさんは本気で注意しに来ていて、弾圧してきている感じがあったが、Bさんの方は、色々と”あえて”やっているのかと疑いたくなる様な感じで、学校側のイメージダウンになるようなことを言ってしまったり、我々の読書会の水準の低さを大学OBとして叱ったり、はたまた資本論第一巻の魅力を突然長々と語り出したりと、終始、本気で注意しに来ているのか何なのか、よく分からなった。

 水田、鈴原、星本はサークルメンバー、斎藤さん、坂上さんはサークルメンバーではない方、中島さんは、途中にフラッと立ち寄ってくれた方である。

 

 (因みに、ブログタイトルの「BIG KYODAI IS WATCHING YOU!!」は、全体主義社会、監視社会のディストピアを描いた小説、ジョージオーウェル1984』で有名な、「BIG BROTHER IS WATCHING YOU!!」の、BROTHERの部分を、和訳した上でローマ字表記してKYODAIとしてみただけであって、特定の大学を示しているわけではない。)

 

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警備員Aさん(以降Aと表記):……こういうスタイルはね、学校側が非常に嫌がるスタイルなんですよ。五月ね、K大学の関係者で感染者15人出てるんですよ。学校側がちょっとピリピリしとるわけですわ。

警備員Bさん(以降Bと表記):まあ出来ればもう少しの辛抱なんで。

斎藤:いやー、それは分かんないですよ。去年からずっと、「もう少し」って言われてますからね(笑)

水田:今が正念場ってね(笑)

B:それはまあこういう事態ですからね。

A:延長されているので、緊急事態宣言が。学校側もピリピリしているんで、もうこれはお願いなんでね……

B:昨今はね、割と(学校も)しつこくてね。あそこの図書館の前でこたつを出して、本を夜、日をまたいで読むということをやっている人たちがいましてね……

星本:そんなことやってる人たちがいるんですか!?

B:彼らにも、こういう風にお願いして辞めてもらって、その時にね、細かく全部、下に敷いてあるものまで、これは何だ?と聞いてくるのでね、いやなんでしょうねって。で、全部それを報告書で書かされて。翌日も足りないところを書かされて……。で、一応写真を撮りまして、不明なところがあるといちいち、これは何だ?!と聞いてくるわけです。

鈴原:大学側がですか?

B:はい、事務所の方ですよ。それで、報告書出すじゃないですか。一応大雑把な報告書。今までだったらそれで良かったような。ところがね、どういう訳か今年はね、この四月以降、それがもっと細かくなって、そんなことまで聞くのかという所まで聞いてくるんですよ。

星本:ひっでーな……。

B:でね、どんな本読んでたんだってことまで聞いてくるんですよ。

一同:えーーー⁉(驚愕)

斎藤:嫌だなあそれ(笑)

坂上:ヤバすぎる……。

水田:思想検閲だ……。

B:それで見てみたらね、あー、天下のK大生の割にはずいぶん冴えない本読んでるなーと(笑)

斎藤:冴えない本って何だよ(笑)

星本:ちなみに何読んでたんですか?

B:えーっとね、『新資本論講義』だったかなあ……。

鈴原:ちょっと俺らと被ってる(笑)

B:いやー、本来だったらね、天下のK大生だったらね、本体の『資本論』の、せめて翻訳でも読んでいて欲しいなってね。

水田:俺らも流行りの新書なんか読んでるから恥ずかしい(笑)

B:そういうことになってですね、学校側が翌日、何を読んでいたか聞いてくるもんですから、それを言ってということでですね。結構しつこく聞かれるんですよ。

斎藤:(そんなに聞いてくるのは)図書館で借りてるとしたら逆探知も出来るからか……。

B:ということで、出来ればご協力をお願いしたいでーす。

星本:そうですねー。協力はしたいんですけどねー。

B:ましてやこれ密閉空間でしょ?

星本:いや、これ網になってるから、全然密閉じゃないですよ。

B:これでも大体密閉でしょ。

一同:いやいやそれは(笑)

B:見た目がねー。あんまりよくないよ。とにかくできるだけ協力をお願いしたいなあという。

A:学校側から我々に何で言わへんかったんだということになりますからね。

B:写ってますからねこれも。

A:色んな所にカメラあるんで。あそこにあるのも見えているだけじゃなくてちゃんと動いているんでね。

中島:監視カメラが大量にあるぞと……。

A:ここ入ってくるときからもう写ってるから。

星本:そうなんですか?

斎藤:監視カメラなんかがあるんですか?

A:全部の入り口につけてありますよ。

斎藤:マジかよ……。ヤバいな……。

B:ですから、ここに入ってくる時点で既に写ってると。で、他でもあちこちに(カメラが)ありますから。

星本:WATHCHING YOUみたいだな……。

鈴原:確かに(笑)

水田:BIG KYODAI、と(笑)

B:で、新たに三台かな。追加されましてね。

星本:えーーー⁈

鈴原:ヤバすぎる。

B:皆さん学生証持ってるでしょ?ていうことは、顔写真がデータに入っているわけです。こちらは時間だけ言って(カメラの映像と照合して)しまえば、自動的に誰かがわかると。

星本:え、そんなことやってるんですか⁈顔認証のプラグラミングを使っているということ?

A:顔認証なんてそんなんしてると思いますよ。

中島:嘘だろ(笑)

水田:中国みたいだな(笑)

斎藤:撮られたらどうなっちゃうんですか?

B:それは学校側が判断することだから、僕たちは関係ないですから、ただ言われてるだけです。ただもうね、とにかくしつこくてね。だから今日これ(テント)を写真で撮ったらね、何聞かれるのかなあってね。

A:そういうことで、聞いていただけなかったら写真を撮りますということですね。

斎藤:いや、仰る通り、仕事だからそれは分かるんですけど、逆に大学どう思います?大学の対応とかについて。

A:何も思いませんよ。仕事ですから。

B:こういう場合はとにかく、自粛期間中はお願いしてという。で、聞いてくれなければ聞いてくれませんでした、と言えば済むだけのことですから。

星本:自粛期間中じゃなかったらこういうことしてもいいですよと、大学からは言われているんですか?

B:それは、まだ分かりません。自粛期間中のことだけです。ですから、ありえないことは言っても意味がありません。空想ですそれは。ですから、とにかくこういう期間中だけは、出来るだけ自粛して頂きたいと。で、野球部とテニス部だけは、あれはもう仕方がないと。外でやるものだから(何故かBさんもちょっと半笑い)。あれ以外はどうも公認されていないみたいですから。

斎藤:いやいや、おかしな話だ……。

鈴原:確認ですけどお願いですよね。

B:お願いですよ。

星本:でも例えば写真を撮るということになると、一つ、こう、アクションをする訳じゃないですかこっちに対して。

A:顔を写さなければいいでしょ。こういうことやってる奴らがいたっていうことで。代表者は学生証を提示してもらわなですけど。

斎藤:代表者とか僕等いないんだけどなぁ……(笑)。

星本:我らマルチチュードに代表などいない!

B:じゃあまあ一番の年長者か。

中島:俺じゃん(笑)

斎藤:ただ通りかかってフラッと寄っただけで学生証出さなきゃいけなくなる羽目に(笑)

B:一応は、そういうことで。だからもう、何もない方が本当はありがたいんです。こちらとしても。変な摩擦は起こしたくない。

中島:向こう側に、テントなしで集まっている奴らはいたけどね。こっちはテントがあるっていうことしか違わないけどね。この線引きはどこにあるのか。

星本:何人以上がダメとかはあるんですか。

B:いや~、これなんかいかにもこうやって見たらね。誰がどう見ても何かで集まってるなって雰囲気じゃないですか。

星本:それは現場での判断ということですか?

B:ただベンチに座っているだけというのとはちょっと形態が違いますよね。

鈴原:いや、これベンチに座っているだけなんですけど……。

斎藤:とにかくテントが良くないということですか?

B:いや、テントだけじゃない。テントを取っても、これはねー。もし100人の人にこれを見せたら、9割以上はただテントに座っているだけではないと判断するでしょうね~。

鈴原:それは何割くらいの人がそうではないと判断したらオッケーなんですか?

B:何割とかそういう問題じゃないでしょ。

鈴原:でも、あそこのベンチはオッケーなんですよね。

中島:向こうのベンチに五人くらい座ってたけどあれはオッケーなの(笑)

A:いや、それも注意しに行きますよ。これから。

斎藤:そういう問題じゃないでしょ。

A:見た感じの形が明らかに違うじゃないですか。

B:誰が見てもね。もし、どうしてもっていうんであればね、2,3人ずつ離れて座ってやっているんだったらね……

星本:離れているというのが大事ということですか?

A:いやそうじゃないですよ。揚げ足を取らないで下さいよ。

一同:いや揚げ足取ってはないだろ(笑)

B:ちなみに何の本読んでるんですか。

星本:『人新世の資本論』って本ですね。

水田:流行りに乗っかって……。

星本:今めっちゃ流行っているらしいんですよこれが。

B:へー、そうなんですか。

星本:僕らは流行りに乗る、凄いミーハーな集団ですので(笑)

B:本体は読まないんですか?

鈴原:本体って、『資本論』の本体ってこと?

星本:本体は、えーっと…………。

水田:本気出せば読めるんですけどね。今はたまたま手を抜いて新書でも読もうかなっていう気分だったので。

斎藤:ダサすぎる(笑)

坂上:この本は未発表論文に基づいている話なので、本体が資本論っていう訳ではないんですよ。そもそも邦訳もされていないし。ドイツ語で読めっていうのは流石に厳しいし…。

中島:なんか言い訳にしか聞こえなくなってきた(笑)

B:ま、なるべくならば協力して欲しいと。一応撤収するのに時間かかりますよね?ですから、少し経ってからまた来ますから。次は、二時間後くらいに来ますからね。そのころまでには撤収して頂ければありがたいなと。

斎藤:ずっと巡回されているんですか?

B:二、三時間おきくらいにね。何にもない方がこちらも嬉しい。こんなこと報告書に書きたくないですから。

星本:それは申し訳ないんですけど、僕等もこう、向学心に燃えているわけですから……。

斎藤:仕事はちゃんと真っ当したいっていうことなんですか。別に報告しなくてもいいじゃないですか。

B:そういう話じゃなくて一応、こういう形になっていたら声をかけてお願いするというのが今の仕組みだから。

A:君らも社会人だったら報告するだろ。

中島:巡回の間だけ休憩としていなくなってれば文句なしなのかな(笑)

坂上:まあとにかくお願いをされたと。お願いされたのを聞いたと。

 

A:とにかくこのままだったら写真も撮らせてもらうんでね。顔写らなくてもかまへんので。

B:ま、よろしく。因みに本体(『資本論』)は読んだことあるんですか?

星本:ありますよ!あるに決まってるじゃないですか!(大嘘)

B:一巻目の感想なんかあります?

星本:いやーー……。

斎藤:ダセー(笑)

B:僕はなかなか面白いと思ってね。僕は経済学じゃないからあれですけど。一巻目は、世界の文学が1500冊くらい引用されているんですよね。それだけで全部集めたら世界の文学名作集が出来るんじゃないかってね。それが資本論一巻の面白い所なんですよ。

星本:へー。いやへーとか言っちゃった(笑)

B:まあ色んな読み方があるでしょうけど。

坂上:百科事典みたいな位置づけってことですよね。

水田:何故かこんな時に教養を強化してくる(笑)

B:結構ね、世界文学全集の名言集って言ったらおかしいですけど、名場面が多いんですよ。ドン・キホーテの所が一番泣かせてくれますね。

一同:(笑)

B:とにかく面白いんですよ。ただし、二巻目三巻目となってくると、そういうところはないんですけどね。力尽きてきたんでしょうね。僕は40年前の向坂逸郎の翻訳を読んでいて、岩波をずーっと使ってたんですけどね。大月文庫の翻訳はちょっとだめだね。

星本:そうなんですか。大月が一番いいって聞いてましたけど。

B:それは人によりけりですけどね。英訳とかもたまに使ってましたね。何種類もありますから。面白いのは第一巻だね。

星本:へー。

斎藤:今度もしよろしければ、一緒に読書会しませんか?

B:いやいや、遠慮します。

水田:注意してきた人もオルグしていく(笑)

A:毎年探検部がここを使っているからね。それが報告書事案になっているんで、それかと思ったんだけどね。

B:近寄ってみたらどうも違う。

星本:まあ、僕等もある意味知の探検をしているので……。

鈴原:上手い……のか?(笑)

 

 

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 こうしたやり取りのあと、三十分くらいで、第一回路上テント教養強化は、話すことが無くなって自然に終了した。一部のメンバーは、「負けたみたいでいやだから、学習会自体は終わってもいいけど二時間後にまたここに戻ってきたい!!」と主張したが、それは流石にめんどくさいという冷静な正論に敗北し、テントを片付けたのであった。

 たかが六人で読書会をしているだけで注意してくる警備員もムカつくが、撤収に時間がかかるだろうからみたいな謎の理由で一旦放置してくれたし、何故か資本論第一巻の内容について教えてくれたし、何より仕事だし、話しているうちに段々ムカつきは収まってきた。一労働者に怒りをぶつけてもしょうがない(それはそれで”日和見”なのかもしれないけど……)。

 しかし、それを指示しているKYO大は本当にムカつく。それどころか、ちょっと胡散くさい奴がいれば、そいつが読んでいる本を報告させたり、構内至る所に張り巡らされている監視カメラを用いて顔認証をしたりしているという、あり得ない対応には、最早言葉を失ってしまう。

 「コロナ禍だからしょうがない」と納得してはならない。Bさんの言葉を信じれば、学校の指示が細かくなったのは、「今年の四月から」である。コロナによる影響が最も心配されていた頃からはズレている。コロナ禍を言い訳にして、「そろそろコロナ禍も終わっちゃうから、今の内に規制強化しとこっと♬」みたいなノリで大学の監視を進めているに違いない。コロナ禍という、いかにも“政治的に正しい”理由に幻惑されてはならない。

 というわけで、巷でも良く言われていた監視社会の恐ろしさを、初めて身をもって知った、「サークル『教養強化』」は、監視社会について、特に、監視カメラについて、もっと教養を深めたいと思った。

 しかし、考えてみれば、フーコーとかの難しい本を文字面だけ何冊も追ったしても、カメラなどない絶対安全な自分の部屋かなんかで読んでいれば、学習効率は下がるのではないか。「習うより慣れろ」なんてことわざもあるくらいだ。監視カメラに己の身体を晒しながら監視カメラについての言説を学ぶ方が、学習効率は高まるのではないか。

 ということで、次回は、ディストピア社会について考える予定である。

 

 興味があれば連絡を下さい!!

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